会社経営者や個人で事業を行っている方で、稼いだ利益に対してかかる税金について、納税額を少なくしたいと考えられる方は少なくないと思います。納税額を低くしたいと考えるあまり不必要な資金流出が増え、資金繰りが危うくなるのは本末転倒です。
掛金の全額が所得から控除され納税負担を減らしつつ、かつ将来の返金額に対しても税制上有利となる制度など、収支でみて資金的にメリットのある制度をいくつかご紹介します。
小規模企業共済掛金(法人役員&個人事業主)
小規模企業共済は中小機構が運営する、小規模企業の役員や個人事業主のための退職金制度です。毎月掛け金を払い込み(半年または年払いも可)、退職時や廃業時に共済金として受け取る制度です。
掛金を払い込み、その全額を小規模企業共済掛金等控除として所得から控除できます。掛金に所得税率を乗じた金額がおよその節税効果となります。節税効果を得ながら将来資金の積み立てを行える制度です。
掛金は将来に共済金として入金される際に所得として課税対象となりますが、退職所得控除や公的年金等の控除により課税所得を抑えることができます。掛金は月々1,000円~70,000円で設定でき、途中の増減も可能です。
共済金は退職または廃業時に受け取ることができ、一括と分割のどちらかの受け取り方法を選べます。一括受け取りの場合は退職所得になり、分割受け取りの場合は公的年金等の雑所得として扱われます。
加入条件
1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
5.常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
6. 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)
国民年金基金(個人事業主)
国民年金基金は自営業者などの第1号被保険者を対象に国民年金に上乗せした公的な年金制度です。
払い込んだ掛金の全額が社会保険料控除としてその年の所得から控除できます。一般の個人年金は4万円までしか所得控除できないので全額控除できる点がお得です。掛金に所得税率を乗じた金額がおよその節税効果となります。節税効果を得ながら将来資金の積み立てを行える制度です。
掛金の上限は月額68,000円です。上限額の計算は確定拠出年金の掛け金との合計額となります。
掛金は将来年金として受け取ります。年金として入金される際に所得として課税対象となりますが、公的年金等の控除により課税所得を抑えることができます。
確定拠出年金
個人で積み立てを行う確定拠出年金は、拠出した掛金の全額が小規模企業共済掛金等控除として所得から控除できます。掛金に所得税率を乗じた金額がおよその節税効果となります。節税効果を得ながら将来資金の積み立てを行える制度です。
掛金は個人事業主の方は年間816,000円まで拠出可能です(国民年金基金との合算で計算します)。拠出金は60歳以降に受け取ることができます。運用益が非課税になるため税制面で優遇されている制度です。
ふるさと納税
ふるさと納税を行った額が寄付金控除として所得税計算においては所得から控除され、住民税計算においては税額が控除されます。控除上限額(各個人によって異なります)までの支払いであれば、実質負担額2,000円で各市町村から様々な恩恵を得られるためメリットがある制度です。
経営セーフティ共済(法人&個人事業主)
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、中小機構が運営する取引先事業者が倒産した際に、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥ることを防ぐための制度です。無担保・無保証人で掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで借入れでき、掛金は損金または必要経費に算入できる税制優遇も受けられます。
掛金は損金や必要経費に算入できますが、共済契約を解約した場合に戻ってくる解約手当金は全額課税対象となります。節税策として検討する場合、節税というより課税の繰り延べと考えることもできます。解約手当金は40カ月以上掛金を支払っていると掛金全額が戻ります。
加入条件は資本金基準と従業員数要件を満たした、1年以上事業を行っている法人か個人事業主となります。